『 団塊の世代の建主が老後を考えて建替えた家の紹介』
私と同世代の建築主は長年の社宅生活から、定年を間近にして、小さくても気持ちがゆったり感じられるような終の住家を建てて欲しいと当社に来られました。
元の古い建売の家はずーっと借家として貸されていて、一度もご自分が住むことが無かった関係から、愛着は、あまり持っておられなかったので、躊躇せずに建替える事になりました。
と言っても築20数年で、本当に勿体無くは無いか?何とか改築案は?と考えました。私が床下に潜って土台周りの点検をしたり、既存の間取りから構造耐力壁のチェック、筋交いの程度、柱の垂直度、床の水平度を調べましたら、残念ですが、たった20数年でやはり建替えざるを得ない状態でした。
その第一番目の理由は、経年による自然劣化よりも、建築当初の手抜き工事と言わざるを得ない箇所がかなり有りました。
田んぼを埋め立てすぐに建てたための地盤沈下、筋交いの全く入ってない壁、床下換気口の不足による床下の高湿度、外壁のラス地の悪さから来るモルタル壁の浮き、めくれ、など数え上げたらきりが無い手抜き工事の見本帳みたいな具合です。
あら捜しはこれ位にして、新しい家の話をします。
ご夫婦2人住まいで、車はお持ちではなかったのですが、敷地内に来客用車庫スペースを設けました。(後入りで家の前に車を駐車するのは気が引ける」御主人談。
最近の家は天井高さを高く希望されるのか、家全体が高くなりすぎてバランスが悪いのですね。
この家は、控えめな高さで、新築の家の目立った感じを無くし、廻りの家の外壁色とも調和するような色調にしましたので、出来上がってもそんなに目立ちません。
少しでも早く、家も、住人も、近所に溶け込めるように願って。(と言っても甘い木の香りはご近所に漂っていき、結構目立っています。)
朝日が食堂に思いっきり差し込むように考えた窓の配置、「お酒好き」のご主人が夜遅く帰ってきても奥様の就寝の邪魔にならないように、2階の自分の部屋へ上がるのに安全な階段の勾配、またプラン全体を総評して、喧嘩しながらも夫婦二人が老後を仲良く暮せるように考えたつもりです。
構造は、いつもの木にこだわる家づくりです。床板は私の好きな無垢のクルミ板を使いました。杉、桧、の構造材は全て4寸幅以上、和室の天井は無垢の節だらけ板、柱、土台は赤味の多い元気の良い桧材を使用しました。
木の香りが心を和ませて住まう方が幸せになられる事を祈って、社員全員で最後のお掃除をして、引き渡しさせていただきました。 |